2008年09月15日

「シュパ シュパ」

シュパ シュパ


幼い子が
ソーダー水を飲んでいる

口をすぼめ
顔をくしゃくしゃにしては

__シュパ シュパ シュパ
  シュパ シュパ シュパ

コップを
のぞきこんでいう

そばで 母親が
__はじめて 飲んだのよね
と おしえてくれた

はじめてのおどろき
わたしは
ずっと わすれていた



おとなになって、忘れそうになっているいっぱいのおどろきがある。
いつも はじめての気持ちでいたい。






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2008年09月02日

「風」




だれもいないのに
ぶらんこがゆれている

こどもたちが
かえってしまったあと

やっと 
風の じゅんばんがきて





詩集『またすぐに 会えるから』



公園に、だれもいないとき
ぶらんこに、乗ってみることがあります。

なにももたないで、ぶらんこのくさりだけをもって
ゆれる。
そういえば、すべりだいも 手すりだけをもって 
じぶんをすべらせる。

こどものときって、そのとき、
じぶんをからっぽにして、
たいせつなものだけを にぎっているのですね。

明日は、わたしのたんじょうび。
すれ違いそうな、遠い時間のながれと、宇宙の中で、
この小さなブログを読んでくださった方々、
出会えた心あたたかい友人に、心から感謝。




posted by YH at 10:53| Comment(4) | TrackBack(0) | 詩(子どもの風景) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月18日

風の中



風の中              


「まって まって!
といって おいかけてきてね」
母親に いうと
ちいさな子は かけだしていく

きゃっきゃっと 
走っては 振りかえる

息を切らし
走ってくる母親を
たしかめては またかけだす

じぶんを愛してくれるひとが
走ってきてくれるのが
うれしくてならない

ふたりは
どこまでも走っていく

(まって まって!
といって おいかけてきてね)

  
詩集『いますぐがいい』


  


つい先日も、こんな母子が、走っていくのをみました。
だれもみんな、この子だったし、母親だったのですね。
きっと これからもずっと。






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2008年05月28日

「ままごと」

ままごと


白詰草にすわって
花を摘む

手は
ままごとを憶えている

白い花を
ごはんにしたこと

こころは忘れていたのに


詩集 『いますぐがいい』  
      



ままごとで遊んでいたのは、いつごろまでだったのだろう。
ブリキで出来た小さなフライパンやおなべを、いまでも憶えている。
花や草をちぎって、おなべに入れ、ごはんを作った。

「おいしいごはんが できましたよ」
「はーい」
「いただきます。おいしいね。パク パク パク」
「ごちそうさま」

子どものとき、大切なことをいっぱい、いっぱい話していたのかもしれない。




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2008年05月06日

「こぼれる!」

「こぼれる!」

__かみしばいやさんごっこしよう
わたしはいった
ふたりの子は目をかがやかした
__見るのは 十円だよ

はこをさしだすと
子どもたちはうれしそうに
十円を入れるまねをする

__それでは はじまり はじまり
そういって わたしは
はこを
さかさまにしておいた

そのとき 子どもがさけんだ
__あっ おかねが こぼれる

かみしばいが
終ってからも
「こぼれる!」といった
ちいさな子のしんけんな目が
わすれられなかった

詩集 『いますぐがいい』



こどものころ、家の近くに、自転車に道具を載せて、紙芝居屋さんがきた。
紙芝居屋のおじさんは、まず、拍子木(黒光りしていた)をたたく。
カチ カチ カチ… 路地にこの音がひびくと、子どもたちは走っていく。
「かみしばいが きたよ」と、母親や祖母におこづかいをもらってからだ。
わたしが買うのは水飴。
「まきあめを ひとつください」そういうと、おじさんは水飴の入った壺(缶だったかも…)に割り箸を入れ、くるりと巻いて、とろとろの水飴をわたしてくれる。
それを今度はじぶんで、くるくる巻く。
すると 透明だった水飴がだんだん白くなってくる。他にも、抜き飴やおせんべいもあった。
10人余りが集まると、そろそろ紙芝居がはじまる。
時には、お金がなくて蔭からそっと見ている子もいた。
けれど おじさんが文句をいったりしているのは記憶にない。
わたしは、ゆっくりゆっくり 次へと動かされていく絵を、水飴のこともわすれて見ていた。
子どもにはわからなかったが、おじさんはどんな人だったのだろう。
ひょうひょうとしていて、ふっと笑ったやさしい顔を思い出す。

(ところで、わたしは水飴の巻いたのを「まきあめ」といっていましたが、地方によって違うのかもしれないですね)




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2008年04月24日

「をてがみ」

をてがみ

「をてがみ ありがとう」

五歳の子から
てがみをもらった

「をてがみ」の
「を」

まちがいが
どうしてこんなに
かがやいてみえるのだろう

詩集 『いますぐがいい』より


字を覚えだしたころ「を」という字は、むずかしかった。
「ち」と書いて「と」の下を書く。
そう決めても、なかなか、かたちのとりにくい字だった。
きれいに書けたときはうれしかった。
そんなことを、思い出しながら歩いていたら、ふと スキップしたくなった。
そういえば、スキップも練習した。
なかなかリズムに乗れなくて、右足、左足が、右、右となったり…。
出来たときはうれしかった。
失敗したこと、まちがったこといっぱいあったけれど、出来たこともいっぱいある。
そのたびにうれしかった。





posted by YH at 00:39| Comment(9) | TrackBack(0) | 詩(子どもの風景) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月02日

「いますぐがいい」

いますぐがいい 

──また こんどね
と幼い子にいった

──また こんどとか
  いつかとか いわないで
  いますぐがいい
といわれた

わたしも
いますぐがいい
詩集 『いますぐがいい』より



子どものとき泊りがけで親戚の家に行った。
遊んで、楽しくて、帰るときになって、寂しくてならなかった。
母親に「また来ようね」といわれても泣いたことを憶えている。
大人はみんな、かってはこどもだった。
これからは、楽しくなることばを使いたい。



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2008年03月14日

「あした」

あした

幼稚園の子が話している
「あした あそんだよ。たのしかったよ」
そういってから
そこの子はすぐに
「きのうだった」
と口をおさえて くすくすわらっている
まわりの子もわらっている

詩集 『いますぐがいい』より


子どものころ、夜寝るとき、お気に入りのおもちゃを枕のそばにおいた。
ずっとそばにおいておきたかったから。
そして、あしたもあそぼうと眠りについた。
きっと、早くあしたにならないかなと思いながら。

でもほんとうは、あしたも、きのうも、よくわかっていなかったかもしれない。

それにしても あのころ、ひとときも離せないほど大切だったクマのぬいぐるみやミニカーといつ離れてしまったのだろう。

もう一度会いたい。







posted by YH at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 詩(子どもの風景) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする